葉の色、触感、土の香り 五感がひらく、植物と暮らす日常
日々の暮らしの中に、そっと静けさをもたらしてくれる存在があります。それは、窓辺や部屋の一角に置かれた観葉植物かもしれません。忙しい日常の中で、つい見過ごしてしまいがちですが、植物との触れ合いは、私たちの五感をそっとひらき、小さな幸せに気づかせてくれる豊かな時間となり得ます。
「ごかん日和」編集部では、そんな植物と暮らす日常が、私たちの五感にどのような彩りを与えてくれるのかを探求しました。
視覚:葉の色、形、そして光
植物を視覚で捉えることから、五感への旅は始まります。一口に「緑」と言っても、その色合いは実に多様です。深い森のような濃い緑、生命力を感じる瑞々しいライムグリーン、表面がワックスのように光を反射する艶やかな緑。そして、斑入りや赤みを帯びた葉、特徴的な形をした葉など、一鉢ごとに個性があります。
朝のやわらかな光が葉に透ける様子や、夕暮れの斜光が葉の陰影を際立たせる様を眺めるのは、それだけで心が満たされる時間です。毎日見ているつもりでも、改めてじっくりと観察することで、新しい葉が出ていたり、蕾が膨らんでいたりと、植物が生きて変化しているさまを発見することができます。それは、日常の中に息づく小さな命を感じる、静かで尊い瞬間です。
触覚:葉や茎、土の感触
植物に実際に触れてみることも、五感をひらく大切な行為です。葉の表面を指先でそっとなでてみてください。つるつるしたもの、ベルベットのように微かに毛羽立っているもの、肉厚で弾力のあるものなど、種類によって全く異なる感触が待っています。茎の硬さや、新芽のやわらかな感触も、五感に心地よく響きます。
水やりの際に土に触れるのも良いでしょう。表面が乾いているか、中にまだ湿り気が残っているか。指先で土の温度や湿度を感じることで、植物が必要としているものに寄り添うことができます。植え替えの時には、土の粒感や根の張り具合をダイレクトに感じることができ、植物の成長をより身近に感じられるでしょう。こうした土や植物そのものの感触は、デジタルな情報に囲まれた日常では得がたい、素朴で温かい癒やしを与えてくれます。
嗅覚:土の香り、葉の香り
植物を育てる中で感じる香りは、心を落ち着かせる効果があります。特に、水やりをした後の土から立ち上る、あの独特の湿った香り。アーシーで、どこか懐かしいようなその香りは、私たちを大地に繋がっている感覚にさせてくれます。
また、特定の植物、例えばミントやローズマリーなどは、葉に触れると爽やかで心地よい香りを放ちます。窓を開けた時に、植物の葉をかすめた風が運んでくる、かすかな緑の香りを感じ取るのも素敵な体験です。部屋に置かれた植物は、ただそこにあるだけでなく、空間の空気そのものを清らかにし、やわらかな香りで満たしてくれる存在なのです。
聴覚:水やりの音、自然の音
植物との時間の中には、耳を澄ませることで気づく音もあります。ジョウロから水が注がれ、土にゆっくりと染み込んでいく「シューッ」という音や、葉の表面を伝って滴が落ちる音。こうした水回りの音は、心を穏やかに鎮めてくれます。
もし植物を屋外や窓辺に置いているなら、風に揺れる葉が奏でるかすかな擦れ合う音や、雨粒が葉をたたく音に耳を傾けてみましょう。それは、自然が奏でる小さな音楽であり、私たちを取り巻く環境とのつながりを感じさせてくれる瞬間です。日々の喧騒から離れ、こうした静かな音に耳を澄ませることは、内なる平穏を取り戻す手助けとなるでしょう。
植物と共に、五感をひらく時間
観葉植物と暮らすことは、特別なことではなく、日常の中で自然に五感をひらく機会を与えてくれる素晴らしい習慣です。朝起きて一番に植物の様子を観察する、水やりをする際に葉の感触を確かめる、疲れた時に葉の色をじっと見つめる。こうしたささやかな行為一つ一つが、意識的に五感を使う訓練となり、感性を豊かにしてくれます。
もし、「日々の暮らしに彩りが足りないな」と感じているなら、一鉢の観葉植物を迎えてみるのはいかがでしょうか。それは、視覚、触覚、嗅覚、聴覚を通じて、あなたの日常に新しい発見と、心が安らぐ小さな幸せをもたらしてくれるはずです。植物の穏やかな存在と共に、ご自身の五感をひらく時間を大切に過ごしてみてください。