ごかん日和

何気ない日々の音に耳を澄ます 五感が開く、心の風景

Tags: 五感, 聴覚, 日常の発見, 心地よい音, マインドフルネス

日々の忙しさの中で、私たちは多くの情報を処理しています。視覚から入る情報はもちろん、タスクリスト、通知音、会話など、耳からも絶えず情報が入ってきます。その中で、私たちは意識的に「聞く」ことをしていますが、実は「聴く」という行為は、意外とおろそかになっているのかもしれません。

「ごかん日和」で大切にしているのは、五感を通して日常の小さな幸せを見つけること。今回は、五感の中でも「聴覚」に焦点を当て、何気ない日々の音に耳を澄ますことで見えてくる、心の風景や小さな発見について考えてみたいと思います。

「聞く」と「聴く」の違いに意識を向ける

「聞く」は、音や声を単に認識する受動的な行為と言われます。一方で「聴く」は、音に意識を向け、その質や意味を深く理解しようとする能動的な行為です。

私たちは日常的に多くの音に囲まれています。通勤電車のアナウンス、街の喧騒、オフィスのキーボード音、自宅の家電の作動音など、それらのほとんどは「聞いて」はいても、意識して「聴いて」いることは少ないかもしれません。

しかし、少し立ち止まって、これらの「聞き流している音」に意識的に耳を澄ませてみると、驚くほどの情報や感情、そして新たな視点が見つかることがあります。

日常の音に意識を向けることで広がる世界

例えば、雨の音ひとつをとっても、その聞こえ方は様々です。窓に当たる雨粒の音、屋根を打つ音、アスファルトを濡らす音。ザーッという激しい音もあれば、しとしとと静かに降る音もあります。その音色から、雨の強さや、降り方が変わったこと、そしてその音がもたらす空気の変化に気づくことができます。

カフェで読書をしている時、周囲の話し声やBGM、コーヒーを淹れる音など、様々な音が混ざり合っています。これらを意識的に「聴いて」みると、一つ一つの音が持つ質感や、空間全体が作り出す「音の雰囲気」を感じ取ることができます。それは、視覚情報だけでは得られない、その場の空気感や奥行きを感じる体験となります。

自宅で過ごす時間も同様です。時計の秒針の音、冷蔵庫の稼働音、換気扇の音。これらの生活音は、普段は意識しないものですが、静かに耳を澄ませると、それらが確かに存在し、日々の営みを支えていることを感じられます。これらの音は、安心感や穏やかさをもたらしてくれることもあります。

音が他の五感を開くきっかけになる

音に意識を向けることは、聴覚だけでなく、他の五感を開くきっかけにもなります。

雨音を「聴く」とき、同時に窓の外の景色がぼやけて見える(視覚)、湿った空気が肌に触れる(触覚)、雨上がりの土の匂いがする(嗅覚)など、様々な感覚が同時に刺激されます。

心地よい音楽を「聴く」ことで、体の緊張が緩み、ソファの柔らかさをより深く感じる(触覚)かもしれません。料理中にフライパンで食材が焼ける音を「聴く」ことは、香ばしい匂い(嗅覚)やジュージューと焼ける様子(視覚)と結びつき、食欲をそそる(味覚への期待)体験につながります。

このように、音は単独の感覚情報ではなく、他の感覚と連携しながら、私たちの体験をより豊かで多層的なものにしてくれます。

日常に「聴く時間」を取り入れるヒント

特別なことをする必要はありません。ほんの数分でも、意識して音に耳を澄ませる時間を持ってみることから始めてみてはいかがでしょうか。

こうした時間は、心を落ち着かせ、今この瞬間に意識を向けるマインドフルネスの実践にも繋がります。

まとめ

何気ない日々の音に意識的に耳を澄ます「聴く」という行為は、日常に隠された小さな発見をもたらし、私たちの五感を開き、心の風景を豊かにしてくれます。忙しい日常の中で、ふと立ち止まり、耳を澄ませてみてください。きっと、新しい発見と、穏やかな心地よさが見つかるはずです。

まずは、身近な音一つから。あなたの耳に、どんな音が届いていますか。その音は、あなたに何を語りかけているでしょうか。