ごかん日和

見慣れた「色」を見つめ直す 五感がひらく、日常の小さな発見

Tags: 色彩, 五感, 日常の発見, 視覚, 暮らしの豊かさ

日々の忙しさに追われる中で、私たちはどうしても目の前のタスクや情報処理に意識を奪われがちです。見慣れた景色、慣れ親しんだ空間にいても、そこに隠されている小さな変化や美しさを見過ごしてしまうことがあります。特に、私たちの五感の中でも、常に多くの情報を受け取っている「視覚」は、情報の洪水の中で最も「慣れ」が生じやすい感覚かもしれません。

しかし、少し立ち止まり、意識的に周囲の「色」に目を向けてみるだけで、日常は新しい輝きを放ち始めます。「ごかん日和」では、そんな日常に隠された小さな幸せを見つけるお手伝いをしたいと考えています。今回は、見慣れた色の中に五感を通して発見する豊かな視点についてご紹介します。

五感と「色」の繋がり

私たちの感情や記憶は、様々な感覚と結びついています。中でも「色」は、視覚を通じて直接的に心に働きかける力を持っています。例えば、青色を見て落ち着きを感じたり、赤色を見て活力を得たりすることは、多くの方が経験されていることでしょう。

日常の中にある無数の「色」に意識を向けることは、単に物を見るという行為を超え、その色が持つ雰囲気、それが置かれている環境、そこから生まれる感情や記憶といった、より深い感覚の世界への扉を開くことにつながります。これは、視覚だけでなく、他の五感をも刺激し、複合的な感覚体験を生み出す可能性を秘めているのです。

日常に見つける「色の発見」

では、具体的にどのような場所やモノの色に注目してみると良いのでしょうか。日常には、思っている以上に豊かな色彩が溢れています。

自然の中の色

通勤途中や散歩道にある木々や草花、空の色など、自然の色は季節や時間帯によって刻々と変化します。同じ緑色の葉でも、新緑の明るい緑、真夏の力強い緑、秋の深まる緑、冬の枯葉に残る茶色など、その表情は多様です。

先日、近所の公園で、ふと足元の苔の色に目を奪われました。湿り気を帯びた深い緑色は、まるで小さなベルベットの絨毯のようで、その繊細なグラデーションは、普段通り過ぎていた景色に静かな美しさがあることを教えてくれました。また、夕暮れ時の空がオレンジ色から紫色へと変化していく様子を眺めていると、一日の終わりの穏やかな感覚と共に、心が満たされるのを感じます。

街の中の色

ビルや家屋の壁の色、お店の看板、歩いている人の服装など、街の中にも様々な色があります。無機質に見えるコンクリートのグレーにも、光の当たり方で様々な陰影やトーンがあることに気づくかもしれません。

ふと視線を上げたときに見えた、古い建物の錆びた鉄柵の深い赤茶色や、壁面に飾られたカラフルなアートの色が、街並みに温かみや活気を与えていることに気づくことがあります。また、雨の日に濡れたアスファルトが普段より黒く、反射する光が白く輝く様子は、見慣れた景色をドラマチックに変えてくれます。

身の回りのモノの色

自宅や職場で、毎日目にしているモノの色にも注目してみましょう。お気に入りのカップの色、デスクの上にある文房具の色、本棚に並んだ本の背表紙の色など、意識しないと見過ごしてしまう色がたくさんあります。

私の場合、朝食を食べる際に使う、お気に入りの青いマグカップの色を見るのが好きです。その穏やかな青色は、一日の始まりに静かな落ち着きを与えてくれます。また、仕事の合間にデスク上の観葉植物の鮮やかな緑色を眺めることで、心が安らぐのを感じます。これらの小さな色の発見は、特別なことではなく、まさに日常の中に溶け込んでいる「小さな幸せ」です。

日常の色を見つけるヒント

日常の中で色に意識を向けるためには、少しの工夫が必要です。

まとめ

日常に見慣れた「色」に意識を向けることは、特別なスキルや場所を必要としません。少し視点を変え、五感、特に視覚を通して「色」と向き合うだけで、見慣れた日常の中にも、これまで気づかなかった豊かな色彩や、そこから生まれる感情、記憶との繋がりを発見することができます。

忙しい日常からほんの少し離れ、心を開いて周囲の色を見つめてみてください。きっと、日々のささやかな発見が、あなたの日常に彩りと穏やかな豊かさをもたらしてくれるでしょう。五感をひらく「色」の体験が、あなたの毎日をより豊かなものにすることを願っています。